夏休みになると、大学生の子どもがアルバイトのシフトを増やすご家庭も多いのではないでしょうか。そのときにふと気になるのが、「いくらまで稼いで大丈夫なのか」ということです。

大学生の子がアルバイトを頑張っているのですが、稼ぎすぎると損をすると聞きました。いくらまでなら大丈夫なんでしょうか。

実は私も知りませんでした。娘と話したこともなかったんです。調べてみたら、2025年から仕組みが大きく変わっていました。
この記事では、2025年に新しくできた控除の中身と、我が家が気づいていなかった「掛け持ち」の落とし穴について、国税庁と厚生労働省の情報をもとにまとめます。
☀️ 夏休み、娘は「シフトが入らない」と悩んでいました
我が家の大学生の娘は、アルバイトをしています。この夏休み、娘が困っていたのは「思うようにシフトが入らない」ことでした。夏休みは高校生のアルバイトが増えるため、そのぶん自分の入れる時間が減ってしまうそうです。
そこで娘が言ったのが、「そのぶん、単発のバイトを入れようかな」という一言でした。私はそのとき、何も考えずに「いいんじゃない」と答えています。
でも後になって、ふと気になりました。アルバイト先が増えたら、合計でいくら稼いだことになるのだろう、と。そして、もっと大事なことに気づきます。私は「いくらまで稼いで大丈夫なのか」を知らなかったのです。娘と、その話をしたことすらありませんでした。
💰 2025年から「150万円の壁」に変わりました
調べてみると、2025年(令和7年)の税制改正で新しい控除ができていました。「特定親族特別控除」といいます。令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されるものです。
対象になるのは、19歳以上23歳未満の子どもです。大学生の年代がちょうど当てはまります。これまでは「103万円の壁」という言葉をよく耳にしました。子どもの収入がそれを超えると親の税金が増える、という話です。ところが今は、その基準が大きく動いています。
その前に「合計所得金額」とは
このあとの表に「合計所得金額」という言葉が出てきます。ここでつまずきやすいので、先に説明させてください。私も最初は何のことかわかりませんでした。
税金の計算では、もらった金額そのままではなく、そこから決まった額を引いた後の金額を使います。この引いた後の金額が「合計所得金額」です。アルバイト代のような給与の場合、引く額は「給与所得控除」と呼ばれます。会社員にも経費のようなものが認められている、と考えるとわかりやすいかもしれません。
この引く額も2025年分から変わりました。給与の収入が190万円までなら、引く額は65万円です。つまり計算はとても単純になります。
| もらった給与 | 引く額 | 合計所得金額 |
|---|---|---|
| 123万円 | 65万円 | 58万円 |
| 150万円 | 65万円 | 85万円 |
| 188万円 | 65万円 | 123万円 |
たとえば年間で90万円のアルバイト代なら、90万円から65万円を引いて、合計所得金額は25万円になります。次の表を見るときは、左の「給与収入」の列だけを見ていただいて大丈夫です。合計所得金額は、その内訳として並べています。
親が受けられる控除の一覧
| 子どもの給与収入 | 合計所得金額 | 親が受けられる控除 |
|---|---|---|
| 〜123万円 | 〜58万円 | 63万円(従来の扶養控除) |
| 123万円超〜150万円 | 58万円超〜85万円 | 63万円 |
| 150万円超〜155万円 | 85万円超〜90万円 | 61万円 |
| 155万円超〜160万円 | 90万円超〜95万円 | 51万円 |
| 160万円超〜165万円 | 95万円超〜100万円 | 41万円 |
| 165万円超〜170万円 | 100万円超〜105万円 | 31万円 |
| 170万円超〜175万円 | 105万円超〜110万円 | 21万円 |
| 175万円超〜180万円 | 110万円超〜115万円 | 11万円 |
| 180万円超〜185万円 | 115万円超〜120万円 | 6万円 |
| 185万円超〜188万円 | 120万円超〜123万円 | 3万円 |
| 188万円超 | 123万円超 | なし |
※控除額は国税庁の定める合計所得金額をもとにしています。給与収入の金額は、収入が給与だけの場合の目安です。
150万円までは、親の税金は変わりません
表を見ていただくとわかるとおり、子どもの給与収入が150万円までであれば、親が受けられる控除は63万円のままです。つまり123万円を超えても、150万円までは親の税金に影響がありません。
さらに150万円を超えたあとも、188万円までは控除が少しずつ残ります。ある金額を1円でも超えたら急にゼロになる、という仕組みではないのです。「超えたら大変なことになる」と身構えていた私にとって、これはかなり意外でした。思っていたよりずっとゆるやかな作りになっています。
🏥 健康保険の扶養も150万円になりました
税金とは別に、もうひとつ気にしておきたいものがあります。健康保険です。子どもの収入が一定を超えると、親の健康保険の扶養から外れます。そうなると自分で保険料を納めることになるため、家計への影響はこちらのほうが大きくなります。
この基準も2025年10月から変わりました。19歳以上23歳未満の人については、これまでの130万円から150万円に引き上げられています。年齢は、その年の12月31日時点で判定されます。
つまり税金も健康保険も、大学生の年代は150万円が目安になったということです。ばらばらだった数字がそろったので、以前よりも覚えやすくなりました。
⚠️ 気をつけたいのは、掛け持ちをしたときです
ここからが、我が家にとって一番大事な話になります。娘は「単発のバイトを入れようかな」と言っていました。つまりアルバイト先が2か所になるということです。ここに落とし穴がありました。
「扶養控除等申告書」は1か所にしか出せません
アルバイトを始めるとき、「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類を書きます。この書類は、同時に2か所以上へ出すことができない決まりになっています。
そして給与から引かれる税金は、勤務先がこの書類の有無によって違う基準で計算します。使う基準は次の3つに分かれます。
| どんな勤務先か | 使われる基準 | 引かれ方 |
|---|---|---|
| 申告書を出した勤務先(1か所だけ) | 甲欄 | 少なめ。金額によっては引かれないこともある |
| 申告書を出していない勤務先 | 乙欄 | 多め。少ない金額でも引かれる |
| 契約が2か月以内の単発や日雇い | 丙欄 | 日ごとの別の基準で計算される |
同じ金額を稼いでも、引かれ方が変わります
書類を出しているアルバイト先では、税金が引かれないこともあります。ところが書類を出していないほうの勤務先では、同じくらいの金額でも引かれてしまう場合があるのです。
単発の仕事は、契約の期間が2か月以内であれば「丙欄」という日雇い専用の扱いになります。どの基準が使われるかは雇う側の契約によって決まるため、働く本人が選べるものではありません。
多く引かれた分は、確定申告で戻ります
では損をしてしまうのかというと、そうではありません。多めに引かれた税金は、確定申告をすれば戻ってきます。
📌 制度は、知っている人しか使えません
この構造、私は前にも経験しています。2年前、駅の階段で転んで足首を骨折したときのことです。通勤の途中だったので労災が使えたにもかかわらず、最初は健康保険で3割を払ってしまいました。会社からの案内はなく、通院の途中で自分で気づいて申請しています。くわしくは通勤中のケガは労災ですに書きました。
今回もまったく同じでした。誰も教えてくれません。自分で気づいて動かなければ、戻ってこないのです。
就学援助を調べたときも、同じことを感じました。制度があることを知らなければ、自分が使えるかどうかを考えることすらできません。高校無償化のときも、一度自分で払う必要があることを知らずに慌てました。知っているかどうかだけで、手元に残るお金が変わってしまいます。
🌸 我が家のリアル
この記事を書くにあたって、娘に聞いてみました。話してみると、思っていた以上にお互い何も知らなかったことがわかります。
①いくら稼いでいるのか
娘のアルバイト代は、月に7万円から8万円ほどでした。単純に12倍すると、年間で84万円から96万円ほどになります。
150万円まで、まだ50万円以上の余裕がありました。月あたりにすると5万円前後です。単発のアルバイトを足したとしても、まず届かない金額でした。心配していたのは何だったのか、というのが正直なところです。
②「130万円とかなんでしょ?」
いくらまで稼いでいいか意識したことがあるかを聞くと、娘はこう答えました。
お友達から聞いたけど、なんかよくわからないけど130万円とかなんでしょ?
大学生の娘
この答えに、私はハッとしました。130万円というのは、たしかに以前からある数字です。ただしそれは、健康保険の扶養から外れる基準として長く使われてきたものでした。そして19歳以上23歳未満については、2025年10月から150万円に引き上げられています。
制度が新しくなったことは、変わったと知らせてもらえるわけではありません。学校でも職場でも教えてくれません。友達同士で回っている情報が、いつのまにか正解として定着してしまいます。
③掛け持ちという意識がなかった
三つめが、いちばん気になったところです。単発のアルバイトを入れると勤務先が2か所になることを、娘はまったく意識していませんでした。
本人にとっては「シフトが足りないから、別の日に少し働く」だけのことです。掛け持ちをしている、という感覚がありません。ましてや税金の引かれ方が変わるとは思っていませんでした。

私も、娘が「単発を入れようかな」と言ったとき、何も考えずに「いいんじゃない」と答えていました。二人とも知らないまま進むところだったんです。
もし何も知らないまま単発を続けていたら、多めに引かれた税金に気づかないままだったはずです。確定申告をすれば戻るお金でも、知らなければそのままになります。
話してみてよかったこと
結果としてわかったのは、我が家は今のところ何も心配いらない、ということでした。金額にはまだ余裕があり、働きたいなら単発を足しても問題ありません。
それでも、この話をしてよかったと思っています。娘は自分がいくら稼いでいるかを口に出して確認しましたし、私も正しい数字を知ることができました。何より、これから何かあったときに「あれ、これ大丈夫かな」と立ち止まれるようになります。それが一番の収穫でした。
✅ まとめ|働き控えるのではなく、把握することです
調べてみてわかったのは、「150万円までは気にしなくてよい」ということでした。税金も健康保険も、大学生の年代についてはそこが目安になっています。
古い数字が、そのまま信じられたまま回っています。103万円、130万円。どれもかつては正しかった数字です。けれど今は変わっています。誰かが訂正してくれるわけではないので、自分で確かめるしかありません。
むしろもったいないのは、正しい金額を知らないまま「稼ぎすぎたらまずいかもしれない」と怖がって、働く時間を減らしてしまうことではないでしょうか。子ども自身が働きたいと思っているのに、親の思い込みでその機会をせばめてしまうのは、後悔しないお金の使い方とは言えません。
必要なのは我慢ではなく、把握することです。今どれくらい稼いでいるのか、アルバイト先はいくつあるのか。それを親子で一度話しておくだけで、不安はずいぶん軽くなります。我が家の家計全体をどう見ているかは20年キャッシュフロー表の作り方にまとめました。
不安は、数字にすると「やることリスト」に変わります。
出典
- 国税庁「No.1177 特定親族特別控除」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」
- 国税庁「No.2514 パートやアルバイトの源泉徴収」
- 厚生労働省「年収の壁への対応」



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