年末調整をしても確定申告をしている理由|使った5つの制度

確定申告。年末調整だけで終わらない年があります 税金

会社員は、11月ごろに会社へ書類を出せば、税金の手続きは終わり。私も最初はそう思っていました。

でも我が家は、年末調整を出したあと、2月に確定申告もしています。今年で5年目になります。

きっかけは、医療費が10万円を超えた年があったことでした。やってみたら思ったより簡単で、制度の勉強にもなったので、それから毎年続けています。

この記事では、年末調整と確定申告の違い、年末調整では受けられない控除、私が実際に使った5つの制度、そして毎年かかっている時間を、順番に書きます。

私は娘2人と暮らす働くシングルマザーです。

年末調整と確定申告は、何が違うのか

どちらも、1年間の所得税を正しい金額に合わせるための手続きです。違うのは、だれがやるか、いつやるか、どの控除が使えるかです。

そもそも年末調整は、毎月の給料から引かれている所得税の精算です。毎月引かれている金額は「だいたいの金額」で、正確ではありません。

そこで12月に、会社が1年分の正しい所得税を計算し直します。引かれすぎていた分は戻ってきて、足りなければ引かれます。12月の給料が少し多いのは、これが理由のことがあります。

確定申告も、やることは同じです。違うのは、自分で計算して税務署に出すこと。そして、年末調整では使えない控除も入れられることです。

年末調整確定申告
だれがやる会社自分
いつ11月〜12月ごろ翌年2月16日〜3月15日(令和8年分の場合)
どこに出す会社に書類を出す税務署へ(e-Taxか郵送)
使える控除会社が分かっている控除年末調整では使えない控除も
年末調整と確定申告の違い。年末調整は会社が11月12月ごろに行い、確定申告は自分で翌年2月16日から3月16日に税務署へ。医療費控除やふるさと納税は年末調整ではできない
どちらも所得税を正しい金額に合わせる手続きです。

会社員の多くは、年末調整だけで終わります。終わらないのは、年末調整では受けられない控除がある人です。

なお、ここに出てくるのは所得税の手続きです。住民税は、この結果をもとに自動で決まります。2つの税金の違いは、ふるさと納税で自己負担が2,000円を超える人|税率の境目の前半にまとめました。

年末調整では受けられない控除があります

国税庁のページには、給与をもらっている人が確定申告をすると税金が戻ってくる例として、次のようなものが挙げられています。

  • 医療費控除(医療費をたくさん払った年)
  • 寄附金控除(ふるさと納税など。ワンストップ特例を使う場合をのぞく)
  • 雑損控除(災害や盗難で損害を受けたとき)
  • 住宅ローン控除の1年目(2年目からは年末調整でできます)

どれも、会社が把握していないものです。だから自分で申告します。

ひとり親控除は、年末調整でもできます。扶養控除等申告書に書く欄があります。私は離婚した最初の年に、確定申告で申告しました。

確定申告をしたほうがいい人

次のどれかに当てはまる年は、確定申告をすると税金が戻ってくる可能性があります。

  • 家族の分を合わせて、1年間の医療費が10万円を超えた(所得が少ない人はもっと低い金額で当てはまります)
  • 対象の市販薬を12,000円より多く買った
  • ふるさと納税をしたが、寄付先が6か所以上、またはワンストップ特例を申請していない
  • 住宅ローン控除の1年目にあたる
  • 災害や盗難で、家や家財に損害を受けた
  • 年の途中で会社を辞めて、年末調整を受けていない

1つも当てはまらなければ、年末調整だけで終わりです。当てはまる年だけ、確定申告をすれば大丈夫です。

医療費控除で、いくら戻ってくるのか

制度の説明を読んでも、いちばん知りたいのは金額だと思います。私も最初に気になったのはそこでした。

医療費控除で戻ってくるお金は、2か所からやってきます。所得税は申告したあとに口座へ振り込まれ、住民税のほうは翌年6月からの分が安くなります。住民税は振り込みではないので、気づかないうちに効いていることが多いです。

計算の順番はこうなります。1年間に払った医療費から、保険などで戻ってきた分を引き、そこからさらに10万円を引いた金額が「控除される額」です。この額に自分の所得税率と住民税10%をかけると、手元に残るお金の目安が出ます。

1年間の医療費控除される額所得税率5%の人10%の人20%の人
12万円2万円3,000円4,000円6,000円
15万円5万円7,500円10,000円15,000円
20万円10万円15,000円20,000円30,000円
30万円20万円30,000円40,000円60,000円
所得税の還付と、翌年の住民税が安くなる分を合わせた目安です。保険金などで戻ってきた分があるときは、それを引いてから計算します。

医療費が15万円かかった年でも、戻るのは1万円前後です。思っていたより少ないと感じるかもしれませんが、10万円を超えた分だけが対象なので、こういう金額になります。

自分の所得税率が分からないとき。目安は、課税所得195万円以下で5%、195万円を超えて330万円までが10%、330万円を超えて695万円までが20%です。

課税所得は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額になります。

セルフメディケーション税制のほうは、いくらになるか

こちらは12,000円を超えた分が対象で、控除される額の上限は88,000円です。同じように計算すると、戻る金額はこうなります。

1年間に買った対象の薬控除される額所得税率5%の人10%の人20%の人
2万円8,000円1,200円1,600円2,400円
3万円18,000円2,700円3,600円5,400円
5万円38,000円5,700円7,600円11,400円
10万円88,000円(上限)13,200円17,600円26,400円
上限が88,000円なので、対象の薬を10万円より多く買っても、ここから先は増えません。

どちらを選ぶかは、控除される額で比べます

2つは同じ年に併用できないので、どちらか一方を選びます。このとき見るのは戻る金額ではなく控除される額のほうで、所得税率はどちらも同じなので、控除される額が大きいほうが得になります。

  • 医療費が10万円を超えなかった年は、セルフメディケーション税制を検討します
  • 10万円を超えた年は、両方の控除される額を計算して、大きいほうを選びます
  • 申告したあとで反対にすることはできないので、その年のうちに見ておくと安心です

私は、医療費が10万円に届かなかった年にセルフメディケーション税制を使いました。レシートを1年分とっておいたので、2月に金額を足すだけで判断できました。

家族の中では、所得税率が高い人が申告します

生計を同じくしている家族の医療費はまとめられるので、だれの申告に入れるかを選べます。同じ控除額でも、所得税率が高い人のほうが戻る金額は大きくなります。上の表でいえば、5%の人が3,000円のところ、20%の人なら6,000円になります。

ただし、総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく所得の5%を引く決まりです。そのため医療費が少ない年は、所得が低い人のほうが有利になることもあります。両方で計算してみると、どちらがよいか分かります。

我が家は、選ぶ場面がありません。働いているのが私だけなので、医療費はすべて私の申告に入れています。選べるのは、収入のある人が家庭に2人以上いる場合の話です。

私が使った5つの制度

この5年で使ったのは、次の5つです。

制度使ったのはどんなとき年末調整でできる?
医療費控除医療費が10万円を超えた年できない
ひとり親控除離婚した最初の年できる
セルフメディケーション税制医療費控除が使えない年できない
ふるさと納税(寄附金控除)毎年できない
株の利益の申告会社の持株会を解約したときできない

1つずつ、簡単に説明します。

① 医療費控除

1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費が多かった年に使えます。控除の対象になるのは、「払った医療費−保険などで戻ってきた分」から10万円を引いた金額です(上限200万円)。

※総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなくその5%を引きます。所得が少ない人ほど、使いやすくなっています。

対象になるのは、病院で払った診察代や薬代だけではありません。国税庁のページには、こんなものも挙げられています。

  • 風邪をひいたときの風邪薬の購入代金
  • 通院のための電車やバスの交通費
  • 入院したときの部屋代や食事代
  • 松葉づえ、義歯、補聴器、治療に必要なメガネの購入費

反対に、対象にならないものもあります。

  • 健康診断の費用
  • ビタミン剤など、病気の予防や健康増進のための医薬品
  • 自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代
  • 公共交通機関が使えるのに、タクシーを使ったときの料金

家族の分もまとめられます。生計を同じくしている家族のために払った医療費なら、合計して申告できます。

② セルフメディケーション税制

健康診断や予防接種などを受けている人が、対象の市販薬を12,000円より多く買った年に使えます。12,000円を超えた分(上限88,000円)が控除になります。対象の薬は、レシートに印がついています。

医療費控除とは、どちらか一方しか使えません。私は、医療費控除の対象にならない年にこちらを使いました。あとから「やっぱり反対にしたい」と変更することはできないので、その年のうちに、どちらが得か見ておくと安心です。

「健康診断や予防接種などを受けている」という条件は、申告する本人が受けていれば大丈夫です。家族全員が受けている必要はありません。

対象になるのは、どんな薬でしょうか。大きく2つに分かれます。

  • スイッチOTC医薬品(もともと病院で処方されていた成分が、市販薬になったもの)
  • それ以外の市販薬のうち、決められた効能をもつもの。外用鎮痛消炎薬(湿布など)、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン薬、その他アレルギー用薬、消化器官用薬(胃腸薬など)

見分け方は2つあります。1つは、薬のパッケージについている共通識別マーク。もう1つは、買ったお店のレシートの表示です。対象の薬には印がつくので、買うときにレシートを見れば分かります。

セルフメディケーション税制の対象の見分け方。薬のパッケージに税制対象を示すマークがあり、レシートでは対象の薬に★などの印がつき「★印は税制対象品目」と記載される。1年で12,000円を超えた分が控除(上限88,000円)
パッケージとレシートの2か所で確かめられます(説明のためのイメージです)。

反対に、ビタミン剤や強心剤、カルシウム剤などは対象から外れています。

レシートには、商品名・金額・税制対象である旨・販売店名・購入日が書かれている必要があります。お店によって印の形は違いますが、「★印は税制対象品目」のような一文がどこかに入っています。

検査キットは、2027年1月から対象になります。新型コロナの検査薬、新型コロナとインフルエンザの検査薬、排卵日予測検査薬が、令和8年度の税制改正で追加されました。適用は令和9年(2027年)1月1日以降に買った分からです。2026年に買ったものは、まだ対象になりません。

③ ふるさと納税(寄附金控除)

ふるさと納税は、寄付先が5か所以内でワンストップ特例を使えば、確定申告は要りません。ただし確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。医療費控除のついでに、ふるさと納税も申告に含めることになります。

くわしくは、ふるさと納税の限度額を超えたらどうなる?私が8割で止める理由に書きました。

ワンストップ特例を申請したあとで確定申告をすると、その申請は無効になります。ふるさと納税の分も、確定申告に入れ直すことになります。

④ ひとり親控除

控除額は35万円です。年末調整でもできますが、私は離婚した最初の年に確定申告で申告しました。条件や金額は、ひとり親控除で税金はいくら安くなる?にまとめています。

⑤ 株の利益の申告

会社の持株会を解約したときに、その利益を申告しました。株の売却は、口座の種類によって申告が要る場合と要らない場合があります。

それでも確定申告を選んでいる理由

読者さん

確定申告って、難しくないですか?

なぎ

私も最初はそう思っていました。やってみたら、思ったより簡単でした。今は、制度を知るいい機会にもなっています。

ふるさと納税だけならワンストップ特例のほうが手間は少ないです。ただ、医療費控除などで確定申告をする年は、どちらにしても確定申告にまとめることになります。

もう1つ、私にとって大きいのは「寄付先は5自治体まで」を気にしなくてよくなることです。ワンストップ特例を使うなら、寄付先の数を数えて、申請書を自治体ごとに出して、期限までに届けることになります。確定申告にまとめてしまえば、その悩みがまるごとなくなります。

1回やってみると、次の年からは同じことのくり返しです。むずかしいのは最初の1回だけでした。

それに、自分で申告してみると、税金がどう決まっているのかが少しずつ分かってきます。制度を知って、社会にきちんと参加している感じがするのも、続けている理由です。

読者さん

会社に知られたりしませんか?

なぎ

医療費控除やふるさと納税のために自分で確定申告をするだけなら、会社に何かを出す必要はありません。私も会社には何も出していません。

私のやり方(毎年2時間で終わります)

  • 2月に入ったら、書類をそろえる。源泉徴収票、医療費のレシート、ふるさと納税の受領証明書など
  • 申告期間に入ったら、週末に一気にやる。毎年e-Taxで、パソコンから送信
  • かかる時間は2時間ほど
確定申告の流れ。2月に入ったら源泉徴収票や医療費のレシートをそろえ、2月16日から3月16日の申告期間に入ったら週末にe-Taxで送信。かかる時間は2時間ほど。還付申告なら2月16日を待たずに出せ、5年前までさかのぼれる
準備は2月初め、申告は週末に一気にやっています。

申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って作っています。画面の案内に沿って源泉徴収票などの数字を入れていくと、税額は自動で計算されます。

書類は紙のままファイルに入れて保管しています。1年分をまとめておくと、2月に探し回らずにすみます。

確定申告をすると、その内容は住民税の計算にも使われます。住民税の申告を別にする必要はありません(確定申告書にもその旨が書かれています)。医療費控除やふるさと納税の分は、翌年6月からの住民税にも反映されます。

※税金が戻る申告(還付申告)なら、2月16日を待たずに出せます。さらに、その年の翌年1月1日から5年間できます。去年の医療費のレシートが出てきた、という人でも間に合います。

まとめ

  • 年末調整と確定申告は、どちらも所得税を正しい金額に合わせる手続き
  • 医療費控除・寄附金控除・雑損控除・住宅ローン控除の1年目は、年末調整では受けられない
  • 私がこの5年で使ったのは、医療費控除/ひとり親控除/セルフメディケーション税制/ふるさと納税/株の利益の申告の5つ
  • 医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方だけ
  • 確定申告をすると、ふるさと納税のワンストップ特例は無効になる
  • 準備は2月初め、申告は週末に2時間。還付の申告は5年前までさかのぼれる

会社員でも、年末調整で終わりとは限りません。1つでも当てはまるものがあれば、確定申告をする価値があります。

今日の1つ

家にある医療費のレシートを、1か所に集めてみましょう。

封筒でも紙袋でも大丈夫です。集める場所が決まれば、今日はそれで十分です。

かかる時間は5分。もう捨ててしまった分は、来年の1月から集め直せば間に合います。

全部を今日やろうとすると、たいてい何もしないまま終わります。1つだけなら、今できます。

出典

※制度の内容は変わることがあります。金額や条件は、申告する年のものを国税庁のページやお住まいの税務署で確認できます。我が家の使い方は一例です。

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